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『西日本新聞』に次世代救済を問う記事掲載

『西日本新聞』のコラム「風向計」で、カネミ油症次世代患者救済問題が取り上げられました。
このコラムを執筆された竹次記者は、2008年の仮払金救済法成立の頃からカネミ油症について取材されています。

第4回高砂集会のメディア掲載情報

12月6日(日)、第4回高砂集会「カネミ油症の原因PCB(ダイオキシン類)の製造者責任―次世代まで残る化学物質の健康被害から問う」を開催しました。

この集会は、カネミ油症の原因物質となったPCBは(株)カネカ高砂工業所で製造されたことから、2017年から兵庫県高砂市に被害者・支援者等による集会を開催しています。
今年は、新型コロナウイルス対策のため、高砂会場と五島・長崎・福岡・東京の各会場と個人をオンラインでつなぎ、被害者・支援者など約70人が参加しました。

集会の様子については、以下のメディアなどで取り上げられました。

第4回高砂集会声明

2020年12月6日(日)開催の第4回高砂集会で採択された集会声明


カネミ油症の原因物質であるPCBが製造されたここ高砂の地で、2017年に油症被害者、高砂市民、支援者、全国からの参加者が集まり集会を開催してから、今年で4回目になります。

新型コロナウイルスの感染が広がる中、油症被害者と参加者の安全を考え、一時は見送りも検討しましたが、PCBを製造した(株)カネカの製造者責任を問い続け、被害救済に取り組ませるため、多くの方のご協力により、高砂と五島、長崎、福岡、東京の5会場をネットで繋ぐオンライン集会を開催することができました。

今日の集会で多くの被害者のお話を聞き、油症被害が次世代にまで続き、認定被害者と同じ症状で苦しみながら何の補償もないことを知りました。そして、化学物質の製造者には、法的な責任とは別に社会的責任があることがよく理解できました。

(株)カネカは、過去の裁判で当時の原告被害者と和解したことにより、油症被害への責任は無い、と主張していますが、半世紀先まで被害が継続することを織り込んでの和解ではありません。
また、PCB廃棄物の処理には期限が定められ、その処理費用は製造業者ではなく、保管事業者、国、自治体が負担し、多額の税金が使われていますが、(株)カネカのPCB処理が予定通りに進まず、本来今年度中で完了すべき処理が困難の見込みと判明しました。
いずれも到底納得できるものではありません。

PCB汚染を共に経験した油症被害者と高砂市民は、油症被害の全面救済とPCBの安全な処理を求めて、今後もこの高砂の地、及び全国から発信してゆきます。

2020年12月6日 
「カネミ油症の原因PCB(ダイオキシン類)の製造者責任~次世代まで残る化学物質の健康被害から問う」高砂集会参加者一同

要望書|カネミ油症次世代被害者(患者)の救済について

12月3日(木)に厚生労働省へ提出した要望書の内容です。


2020(令和2)年12月3日

厚生労働大臣 田村憲久様

カネミ油症被害者全国連絡会
世話人会代表 曽我部和弘
カネミ油症被害者支援センター(YSC)
共同代表 石澤時美・大久保貞利・佐藤禮子

要望書
カネミ油症次世代被害者(患者)の救済について

日頃、厚生労働行政に奮闘されていることに感謝申し上げます。さて、2012(平成24)年に「カネミ油症患者に関する施策の総合的な推進に関する法律」(以下「救済法」とします。)が施行され、認定被害者の同居家族で、有症者については認定救済される運用になったことは、被害者救済において大きな前進でした。しかし、カネミ油症認定被害者の子や孫といった次世代被害者の多くは、一切救済がなされず放置されたまま今日に及んでいます。
そこで、カネミ油症被害者支援センター(以下「YSC」とします。)は、各地の被害者団体と協力して、本年、次世代被害者に関するアンケート調査を行いました。
国内において、次世代の被害者に特化した調査は今回が初めての試みです。そして、今回の調査で明らかになったことは、(1)次世代被害者は、一般市民より有訴率が高いこと、(2)次世代被害者と認定被害者との症状は多くが一致していることの2点です。
調査対象者は、救済法による同居家族認定の対象に含まれない1969(昭和44)年1月以降に生まれた、認定被害者の子と孫です。調査方法は、調査協力者に事前にアンケート用紙を郵送し、49名から回答を得ました。また、49名中25名については、YSCメンバーが現地を訪れて直接面談し、聞き取りを行いました。これは、調査項目が多く、調査票を単に郵送し、回収しただけでは対象者の記入負担が大きいためからです。
こうした調査対象者に寄り添った調査方法を採用したため、自由記載欄には幼少期からの病歴、医療費の負担、体調不良に起因する現在の生活苦や将来への不安等が記載され、次世代被害者の実状がよく分かる調査結果となりました。
以上の次第で、本調査結果に基づき、カネミ油症次世代被害者救済に向けて、右記の通り要望します。


1 カネミ油症の次世代被害者を認定の対象として、救済してください。

救済法では、カネミ油症は「カネミ油症事件における当該摂取等を原因として発生した疾患」と定義しています。直接食した者以外にも認定の可能性を広げています。
今回のアンケート調査により、次世代被害者と認定被害者の症状の多くは一致しており、かつ一般市民より次世代被害者の有訴率が高いことが明らかとなりました。そこで、救済法の同居家族認定制度に準じて、次世代被害者もカネミ油症被害者(患者)として認定の対象としてください。

2 速やかな救済の道を開いてください

次世代被害者の症状は深刻で、収入など経済面で困難な状態の者も多く、医療費・就業・将来の生活設計など多くの問題が山積しています。
救済法は、基本理念として「適切な医療を受けられること」、「生活の質の維持向上が図られること」を謳っています。そのためにも速やかな救済の道を開いてください。

3 次世代被害者の健康実態調査を行ってください

認定・未認定を問わず、全国に存在する次世代被害者を対象とした国による健康実態調査を行ってください。
今回は49名の次世代被害者を対象にアンケート調査を行いましたが、全国にはさらに多くの次世代被害者が存在しています。被害者団体から意見を聴取して、被害者の実状に応じて、きめ細かな調査の実施を要望します。

以上

カネミ次世代被害者アンケート調査報告(概要)

まとめ

調査対象者49名の回答から、カネミ油症患者(被害者)の次世代(子・孫)は「一般成人と比較して高い割合で複数の症状を併発・罹患しており、また、それらの症状の多くが認定被害者と一致する」という実態が見えてきた。
「カネミ油症患者に関する施策の総合的推進に関する法律」(以下「救済法」という。)では、カネミ油症を「カネミ油症事件における当該摂取等を原因として発生した疾患」、また、カネミ油症患者を「カネミ油症にかかった者」と定義しており、次世代の多くはまさに「当該摂取等を原因として発生している疾患」に罹患していると考えられ、「カネミ油症患者」ととらえるのが相当であると考える。救済法は、カネミ油症患者が適切な医療を受けられること、また、生活の維持向上が図られることを定めており、この法の精神に則り、次世代についても速やかに救済措置が執られるべきである。


調査の目的

国が過去に行った調査でも、次世代への影響や健康被害の記載はあるが、次世代に特化した調査がないこと、また、多くの認定被害者から、子や孫である次世代について憂慮する声が届けられているため、次世代の健康を含む現在の状況を把握する事を目的としてアンケート調査を実施した。

調査対象者

救済法による同居家族認定の対象に含まれない1969(昭和44)年1月以降に生まれた認定被害者の子供と孫を対象とした。

アンケートの調査項目

認定被害者及び一般成人との比較を行うために、2013(平成25)年より実施され ている「カネミ油症健康実態調査」の調査票と平成28年度「国民生活基礎調査」の健康票を基に項目を決定した。

調査方法

各地の被害者団体に相談して調査対象者(協力者)を募り、アンケート用紙を郵送にて送付・回収を行い、また、可能な限り現地訪問及び電話等で直接聞き取りを行った。

調査の結果

49名という限られた人数であるが、アンケート回答と一般成人及び認定被害者との比較を行った結果、次世代においても「一般成人と比べて、様々な健康被害の自覚症状が高い割合で発生しており、かつ罹患している症状の多くが認定被害者と重なる」ことが分かった。
また、自由記載欄には、幼少期からの病歴、医療費の負担、体調不調に起因する現在の生活苦や将来への不安が述べられていた。親世代の「子供達は健康な生活を知らない」という言葉は、カネミ油症の影響によって、次世代の人生がいかに不本意なものであったかを一言で伝えており、痛切である。

次世代救済への提言

  1. 救済法は、カネミ油症は「カネミ油症事件における当該摂取等を原因として発生した疾患」と定義しており、次世代被害者は、まさに「当該摂取等を原因として発生している疾患」に罹患していると言えるのであり、「カネミ油症患者」ととらえるのが相当である。
  2. 次世代の症状は認定被害者と同様に深刻であり、収入獲得面で困難な状態の者も多く、医療費・仕事・将来の生活設計など多くの問題が山積している。
    救済法は、基本理念として、「カネミ油症患者」が「適切な医療を受けられること」、「生活の質の維持向上が図られること」と定めており、次世代についても、適切な医療を受け、生活の維持向上が図られるよう、速やかに救済の道が開かれるべきである。
  3. 化学物質暴露による次世代への影響は未だ未知の部分が多い。現行の同居家族認定のように「昭和43年の事件当時に同居していた家族」と年限等を定めることなく、祖父母・両親等が認定されている次世代は広く救済されるべきである。
  4. 今回の調査は、49名の次世代を対象として行ったものであるが、全国各地には更に多くの次世代が存在している。
    PCB/ダイオキシン類という化学物質暴露により引き起されたカネミ油症事件は、事件発生から50年経過した現在も根治療法は存在しない。
    被害者の要請に応え、被害の実態に即した救済の施策の確立のためにも、継続的な調査が必要であり、その対象者は認定被害者だけでなく、次世代にも及ぶべきである。
    国は、認定被害者を対象とした調査とは別に、次世代に特化した健康実態調査を実施し、次世代のおかれた現状を解明していただきたい。なお、その際には、調査方法及び調査項目の作成などについては被害者団体から意見聴取を行うなど協力を呼びかけ、また、直接対象者から聴取を行うなど、きめ細やかな被害者に寄り添った調査方法を要請したい。

以上