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カネミ油症とは

カネミ油症事件とは?

カネミ油症とは、1968年(昭和43年)、福岡・長崎・広島など西日本を中心に発生したカネミ倉庫(株)社製の「ライスオイル」(米ぬか油)による食中毒であり、食品公害事件です。症状は、吹出物、色素沈着、目やになどの皮膚症状のほか、全身の倦怠感、しびれ、食欲不振など多様であるため、故・原田正純医師は「油症は病気のデパート」と表現しました。

油症検診でのチェック項目(厚生労働省)

事件の原因は、食用の米ぬか油にPCB(ポリ塩化ビフェニル Poly Chlorinated Biphenyl; 略称PCB)が多量に混入していたことでした。この油で調理した天ぷらや揚げ物、炒め物などを食べて、有毒な化学物質を身体に取り入れてしまったのです。原因となったPCB(商品名「カネクロール」)を製造したのは、(株)カネカ(旧鐘淵化学工業)です。カネミ倉庫は米ぬか油を製造する際、脱臭工程の熱媒体としてPCBを使用しており、それが食用油に混入したのです。なお、カネミ倉庫とカネカは社名が似ていますが、グループ企業等の関係ではありません。

1968年10月に油症事件が報道される約半年前の2~3月頃、カネミ倉庫社製のダーク油にPCBが混入し、これを含む配合飼料を食べた鶏が大量死する「ダーク油事件」がありました。このとき、国が食用油についても調査し、販売停止や回収など適切に対応していれば、被害の拡大は未然に防げたと考えられています。

事件当初、カネミ油症の原因はPCBだと考えられていました。しかし、その後の研究により、主原因はダイオキシン類であり、PCBとダイオキシン類の複合中毒症であることがわかりました。PCBが熱媒体として加熱された際、ダイオキシン類の一種であるPCDF(ポリ塩化ジベンゾフラン polychlorinated dibenzofuran; 略称PCDF))などに一部が変化したと考えられています。PCBやダイオキシン類は、一度体内に取り込まれると残留性が高く、排出方法や根本的な治療法が見つかっていません。


カネミ油症の「患者」とは?

2025年3月末現在、カネミ油症の認定患者は累計で2,380名(亡くなった方を含む)です。患者として認定されると、加害企業であるカネミ倉庫から医療費の自己負担分が支払われます。また、健康実態調査への協力等に対して、国とカネミ倉庫から合わせて年額24万円が支払われます。

事件当時、西日本を中心に「カネミライスオイル」を摂取した人たちが皮膚症状などを訴え、14,000人以上が被害を届け出ました。カネミ油症は、4大公害病(水俣病、新潟水俣病、イタイイタイ病、四日市ぜんそく)と比較するとあまり知られていませんが、重大かつ大規模な食品公害事件なのです。しかし、患者認定を求めて申請しても認められないケースが多く、水俣病などと同様に「未認定問題」が生じています。

一般に食中毒事件の場合、原因食品を食べて症状が現れれば患者とされますが、カネミ油症では認定審査のプロセスを経なければなりません。事件直後、九州大学に油症研究班が発足し、油症患者として扱うかどうか判断するための診断基準を作りました。初期の診断基準では、皮膚症状の有無が重視されましたが、その後の改定を経た現在の基準では、主因物質であるダイオキシン類の血液中の濃度が重視されています。

2012年12月の診断基準の改定により追補された同居家族認定を除き、患者認定を受けるためには、年1回開催される油症検診を受け、診断基準を満たす必要があります。しかし、事件から50年以上過ぎた今日では、自覚症状があってもダイオキシン類の血中濃度は高くない場合が多いのです。一方、かつて皮膚症状がひどくて認定された患者のなかには、現在の血中濃度を調べると一般並みという例も見られるなど、現行の診断基準が妥当でないことは明らかです。

油症診断基準(2012 年 12 月 3 日追補)

事件発生から50年以上の歳月が流れましたが、カネミ油症はいまだに終わっていないのです。

各地の被害者団体(50音順)

  • カネミ油症関東連絡会
  • カネミ油症新認定訴訟原告団
  • カネミ油症被害者高知連絡会
  • カネミ油症被害者五島市の会
  • カネミ油症被害者東海連絡会
  • カネミ油症被害者福岡地区の会
  • 北九州カネミ油症被害者の会
  • 田川被害者の会
  • 長崎市油症患者の会
  • 長崎本土地区油症被害者の会
  • 広島県カネミ油症被害者の会
  • 広島県油症被害者の会
  • 油症医療恒久救済対策協議会
  • 油症被害者関西連絡会

※2019年1月、各地の被害者団体をつなぐネミ油症被害者全国連絡会」が設立されました。


より深く学ぶには

カネミ油症問題年表

文献リスト(図書・論文)

油症関連Map

※年表・文献リスト・マップの作成には、宇田和子さん(高崎経済大学)に全面的なご協力をいただきました。

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