まとめ
調査対象者49名の回答から、カネミ油症患者(被害者)の次世代(子・孫)は「一般成人と比較して高い割合で複数の症状を併発・罹患しており、また、それらの症状の多くが認定被害者と一致する」という実態が見えてきた。
「カネミ油症患者に関する施策の総合的推進に関する法律」(以下「救済法」という。)では、カネミ油症を「カネミ油症事件における当該摂取等を原因として発生した疾患」、また、カネミ油症患者を「カネミ油症にかかった者」と定義しており、次世代の多くはまさに「当該摂取等を原因として発生している疾患」に罹患していると考えられ、「カネミ油症患者」ととらえるのが相当であると考える。救済法は、カネミ油症患者が適切な医療を受けられること、また、生活の維持向上が図られることを定めており、この法の精神に則り、次世代についても速やかに救済措置が執られるべきである。
調査の目的
国が過去に行った調査でも、次世代への影響や健康被害の記載はあるが、次世代に特化した調査がないこと、また、多くの認定被害者から、子や孫である次世代について憂慮する声が届けられているため、次世代の健康を含む現在の状況を把握する事を目的としてアンケート調査を実施した。
調査対象者
救済法による同居家族認定の対象に含まれない1969(昭和44)年1月以降に生まれた認定被害者の子供と孫を対象とした。
アンケートの調査項目
認定被害者及び一般成人との比較を行うために、2013(平成25)年より実施され ている「カネミ油症健康実態調査」の調査票と平成28年度「国民生活基礎調査」の健康票を基に項目を決定した。
調査方法
各地の被害者団体に相談して調査対象者(協力者)を募り、アンケート用紙を郵送にて送付・回収を行い、また、可能な限り現地訪問及び電話等で直接聞き取りを行った。
調査の結果
49名という限られた人数であるが、アンケート回答と一般成人及び認定被害者との比較を行った結果、次世代においても「一般成人と比べて、様々な健康被害の自覚症状が高い割合で発生しており、かつ罹患している症状の多くが認定被害者と重なる」ことが分かった。
また、自由記載欄には、幼少期からの病歴、医療費の負担、体調不調に起因する現在の生活苦や将来への不安が述べられていた。親世代の「子供達は健康な生活を知らない」という言葉は、カネミ油症の影響によって、次世代の人生がいかに不本意なものであったかを一言で伝えており、痛切である。
次世代救済への提言
- 救済法は、カネミ油症は「カネミ油症事件における当該摂取等を原因として発生した疾患」と定義しており、次世代被害者は、まさに「当該摂取等を原因として発生している疾患」に罹患していると言えるのであり、「カネミ油症患者」ととらえるのが相当である。
- 次世代の症状は認定被害者と同様に深刻であり、収入獲得面で困難な状態の者も多く、医療費・仕事・将来の生活設計など多くの問題が山積している。
救済法は、基本理念として、「カネミ油症患者」が「適切な医療を受けられること」、「生活の質の維持向上が図られること」と定めており、次世代についても、適切な医療を受け、生活の維持向上が図られるよう、速やかに救済の道が開かれるべきである。 - 化学物質暴露による次世代への影響は未だ未知の部分が多い。現行の同居家族認定のように「昭和43年の事件当時に同居していた家族」と年限等を定めることなく、祖父母・両親等が認定されている次世代は広く救済されるべきである。
- 今回の調査は、49名の次世代を対象として行ったものであるが、全国各地には更に多くの次世代が存在している。
PCB/ダイオキシン類という化学物質暴露により引き起されたカネミ油症事件は、事件発生から50年経過した現在も根治療法は存在しない。
被害者の要請に応え、被害の実態に即した救済の施策の確立のためにも、継続的な調査が必要であり、その対象者は認定被害者だけでなく、次世代にも及ぶべきである。
国は、認定被害者を対象とした調査とは別に、次世代に特化した健康実態調査を実施し、次世代のおかれた現状を解明していただきたい。なお、その際には、調査方法及び調査項目の作成などについては被害者団体から意見聴取を行うなど協力を呼びかけ、また、直接対象者から聴取を行うなど、きめ細やかな被害者に寄り添った調査方法を要請したい。
以上
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Last Updated: 2020-12-06 by ysc
カネミ次世代被害者アンケート調査報告(概要)
まとめ
調査対象者49名の回答から、カネミ油症患者(被害者)の次世代(子・孫)は「一般成人と比較して高い割合で複数の症状を併発・罹患しており、また、それらの症状の多くが認定被害者と一致する」という実態が見えてきた。
「カネミ油症患者に関する施策の総合的推進に関する法律」(以下「救済法」という。)では、カネミ油症を「カネミ油症事件における当該摂取等を原因として発生した疾患」、また、カネミ油症患者を「カネミ油症にかかった者」と定義しており、次世代の多くはまさに「当該摂取等を原因として発生している疾患」に罹患していると考えられ、「カネミ油症患者」ととらえるのが相当であると考える。救済法は、カネミ油症患者が適切な医療を受けられること、また、生活の維持向上が図られることを定めており、この法の精神に則り、次世代についても速やかに救済措置が執られるべきである。
調査の目的
国が過去に行った調査でも、次世代への影響や健康被害の記載はあるが、次世代に特化した調査がないこと、また、多くの認定被害者から、子や孫である次世代について憂慮する声が届けられているため、次世代の健康を含む現在の状況を把握する事を目的としてアンケート調査を実施した。
調査対象者
救済法による同居家族認定の対象に含まれない1969(昭和44)年1月以降に生まれた認定被害者の子供と孫を対象とした。
アンケートの調査項目
認定被害者及び一般成人との比較を行うために、2013(平成25)年より実施され ている「カネミ油症健康実態調査」の調査票と平成28年度「国民生活基礎調査」の健康票を基に項目を決定した。
調査方法
各地の被害者団体に相談して調査対象者(協力者)を募り、アンケート用紙を郵送にて送付・回収を行い、また、可能な限り現地訪問及び電話等で直接聞き取りを行った。
調査の結果
49名という限られた人数であるが、アンケート回答と一般成人及び認定被害者との比較を行った結果、次世代においても「一般成人と比べて、様々な健康被害の自覚症状が高い割合で発生しており、かつ罹患している症状の多くが認定被害者と重なる」ことが分かった。
また、自由記載欄には、幼少期からの病歴、医療費の負担、体調不調に起因する現在の生活苦や将来への不安が述べられていた。親世代の「子供達は健康な生活を知らない」という言葉は、カネミ油症の影響によって、次世代の人生がいかに不本意なものであったかを一言で伝えており、痛切である。
次世代救済への提言
救済法は、基本理念として、「カネミ油症患者」が「適切な医療を受けられること」、「生活の質の維持向上が図られること」と定めており、次世代についても、適切な医療を受け、生活の維持向上が図られるよう、速やかに救済の道が開かれるべきである。
PCB/ダイオキシン類という化学物質暴露により引き起されたカネミ油症事件は、事件発生から50年経過した現在も根治療法は存在しない。
被害者の要請に応え、被害の実態に即した救済の施策の確立のためにも、継続的な調査が必要であり、その対象者は認定被害者だけでなく、次世代にも及ぶべきである。
国は、認定被害者を対象とした調査とは別に、次世代に特化した健康実態調査を実施し、次世代のおかれた現状を解明していただきたい。なお、その際には、調査方法及び調査項目の作成などについては被害者団体から意見聴取を行うなど協力を呼びかけ、また、直接対象者から聴取を行うなど、きめ細やかな被害者に寄り添った調査方法を要請したい。
以上
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