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2019-22年度 活動報告

2023年4月15日(土)に開催された第17回YSC総会で承認された「2019-22年度 活動報告(2019年10月1日~2023年3月30日)」は次のとおり。

1 次世代・未認定者被害者の救済に向けた取り組み

2012年に成立した救済法で「油症患者と同居している家族も救済対象とする」いわゆる同居家族認定の道が開かれました。しかし次世代についてはごく一部を除いて救済の対象になりませんでした。
2019年6月に坂口力元厚労大臣から「次世代救済のためにはまず対象者の健康状態が健常者と比べてどのような状態であるかを調査する必要がある」と提言され、それを受けてYSC(カネミ油症被害者支援センター)は2020年に次世代被害者の健康調査を行い、49名の回答を得ました。49名中25名は五島市で現地調査を行い得たものです。これは「カネミ油症被害者五島市の会」のご協力なくしては実現できませんでした。カネミ油症の歴史的社会的困難さから親が次世代にカネミ油症であることを伝えていない重い現実があり、調査は主に次世代の親や祖父母に対しての聞き取りの形で行われました。また直接会えない方には、単にアンケート用紙を郵送し回収するのでなく、電話等で丁寧なフォローを行って回収しました。
YSC調査では、次世代被害者は一般健常者と比較して有訴率(症状を訴える割合)が高く、油症患者と似た症状で苦しんでいる人が多い、と判明しました、これを受けてYSCは「カネミ油症被害者全国連絡会」と共同で「カネミ油症次世代被害者(患者)救済に関わる申し入れ書」を作成して2021年3月1日に厚生労働省に提出し、次世代救済と国としての調査の実施を要請しました。
こうした経緯から厚労省は2021年8月から11月に初めての次世代調査を実施し、予想を上回る回答数を得て、2022年2月に中間報告が公表されました。回答数は388名(子322人、孫66人)で、30都道府県から回答がありました。中間報告では、自覚症状として「倦怠感がある42.5%」「頭痛・頭が重い36%」等、次世代にも症状が出ていることが明らかになりました。全国治療研究班と厚労省は、2023年6月に「最終報告」を行う予定としています。辻学全国油症治療研究班班長は、①アンケートのさらなる解析、②全国の一般世帯を対象とした健康調査との比較、③油症検診を受診していただき、血液検査を含む医療従事者による客観的な臨床状況の調査を行う、上記3点を今後の方向性として発言しています。
次世代被害者救済の取り組みは進みましたが、未認定者被害者の救済については、未だ効果的な取り組みができていません。カネミ油症が食中毒事件(厚労省の考え)というのであれば、食品衛生法の趣旨からして「食べた事実」と「有症」の2点で被害者として救済すべきなのに、法的根拠のない「認定」という仕組みで切り捨ててきました。家族内に一人も「認定者」がいなければ、汚染油を直接摂食した被害者でさえ、「家族内認定」は適用されません。今夏に予定されている次世代調査の最終報告を受けて、未認定者被害者全体の救済に向けての取り組みを検討する必要があります。

2 カネミ油症救済法を活用した認定被害者救済への取り組み

カネミ油症救済法が成立したとはいえ、認定被害者の救済内容はいまだ不十分です。年24万円の給付金の引き上げや、三者協議に基づく「医療費救済に関わる協定書づくり」の支援、等々被害者の要望を基に認定被害者の救済内容改善に向けて、「カネミ油症被害者全国連絡会」と連携、協力して取り組みました。
2020年から新型コロナウイルス感染拡大の影響で各地での直接参加の取り組みが難しくなりましたが、その間に広まったオンライン会議を活用して、カネミ油症被害者全国連絡会とYSCが定期的に意見交換を行い、年2回行われる被害者、カネミ倉庫、国による三者協議に向けた打ちあわせ等もZoom会議で行い、より有意義なものになりました。また、カネミ油症被害者全国連絡会、YSC、厚労省、油症治療研究班によるZoom会議を実施して意見交換を行い、緊張感を保ちつつも交流を深めることができました。年1回行われる全国公害被害者総行動の省庁交渉も、直接参加に加えてZoom参加も併用し、遠隔地の被害者や弁護士も参加できるようになりました。しかし、具体的な救済内容の改善は未だ実現していません。

3 カネカ対策への取り組み

これまでに6回にわたり、兵庫県高砂市でカネミ油症被害者全国連絡会、カネミ油症被害者とともに行動する高砂市民の会、YSCの三団体共催で高砂集会を開催し、カネミ油症の原因物質PCBを製造したカネカの社会的責任を追及する取り組みを重ねてきました。
2019年10月第3回高砂集会では、坂口元厚労大臣を招いて記念講演をしていただきました。2020年12月第4回からは、新型コロナの影響により初のオンラインとリアル参加を併用した集会となりましたが、高砂、五島、長崎、福岡、東京の5会場をネットで繋ぐことで、遠隔地の被害者、支援者も参加できるようになり、参加者も増え、各会場で取材報道がされました。2021年11月第5回は、福島原発事故の被害者も参加され、交流を深めました。2022年11月第6回では、被害者4名が高砂会場にて初めての座談会を行いました。
集会の内容はYSCホームページで動画として一般公開しています。第4回高砂集会でのプレゼントーク「原因化学物質PCB製造者の社会的責任―PL法の立法思想から考える」をまとめたブックレットを制作し、YSC会員に郵送すると共に、各地の集会等で配布しています。集会では毎回、カネカの社会的責任を訴える集会声明を採択し、集会前には、カネカ工場に申し入れ書の手渡しを試みています。
しかし、未だにカネカの高砂集会参加は実現していません。申し入れ書の受け取りもカネカは拒否しています。集会を重ねることで地元高砂の住民との交流とカネミ油症への理解は深まりましたが、カネカに社会的責任を果たさせることは実現していません。

4 カネミ油症事件の啓発に向けた各界各層への働きかけ

2020年10月にホームページ「カネミ油症被害者支援センター(YSC) – 終わらない食品公害・化学物質被害」を開設し、YSCの紹介や有用な資料、集会等の動画配信、最新の取り組み等、随時情報発信をしています。
また、東京池袋のエポック10にて、2021年6月と10月に「メディアが語る~53年前のカネミ油症事件に関わる現場を取材して」、2022年6月に「化学物質は世代を超える~カネミ油症次世代調査から考える」のリアル&オンラインイベントを開催しました。いずれも有意義な内容で好評でした。
しかし、各界各層へ油症事件の理解を深めるという点では未だ不十分です。

5 各地区の被害者交流集会の開催と自治体交渉

14番目の被害者団体として「カネミ油症被害者東海連絡会」が2020年10月に発足し、「カネミ油症被害者全国連絡会」にも加入していただきました。ZOOM会議利用が進んだことにより、「カネミ油症被害者全国連絡会」の中心メンバーである被害者とは必要に応じてZoomでの打ち合わせ、意見交換が可能となりました。
しかし、各地区での被害者懇談会、被害者交流集会は実現できていません。各自治体との交渉も進んでいません。新型コロナ感染の状況により、今後どのように取り組んでいくかが課題となります。

6 省庁交渉ならびに国会議員への働きかけ

1で報告したとおり、国会議員を通じて省庁交渉を行い、国による次世代調査を実現することができました。また、Zoom会議を活用して「カネミ油症被害者全国連絡会」と意見交換、打ち合わせを行い、必要に応じて省庁交渉を行いました。
しかし、今後の法制度の改正に向けて、被害者団体と協力して、党派を超えた国会議員への働きかけを行う点では、未だ模索中です。

7 YSCの組織的拡充、財政的基盤の強化に向けた取り組み

新型コロナの影響により対外的な活動が難しい時期が続いたため、結果的に支出としての活動費が減ることになりましたが、財政的基盤の強化には至っていません。
組織的拡充については、YSCホームページ及びYSCニュースにて継続的にYSC運営委員の募集を呼びかけていますが、未だ増員はありません。また、YSC運営委員の高齢化もあり、救済活動に十分に参加できないメンバーも出ている状況です。

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